ヴァイオリンのヴィブラートをtartiniを使って可視化し、改善に役立てた話
本記事は富士通クラウドテクノロジーズ Advent Calendar 2022の13日目の記事です。昨日は@HanchAの 30秒ではじめる作業自動化・UIテスト自動化 でした。
UIテストを作るのは労力がかかりますが、ハッピーパスだけでもUIテストを作ってCIでチェックしてくれると安心して開発できますよね。
はじめに
弊社のアドカレは技術的な記事が多いと思いますが、私はちょっと毛色を変えて趣味のヴァイオリン演奏の練習に関する記事を書いてみます。私は大人からヴァイオリンを始めて、一時期弾いていなかった期間はありますがかれこれ10年以上ヴァイオリンを弾いています。
ヴァイオリンを含む弦楽器演奏の魅力の1つは、ヴィブラートではないでしょうか?ヴィブラートを美しくかけれると音色に潤いが生まれます。心地の良いヴィブラートをかけれるようになりたいと願うヴァイオリン弾きは多いと思いますが、習得が困難な技術でもあります。今回は、tartiniというソフトウェアを補助的に使ってヴィブラートの改善に取り組んだ話しを書きます。
理想とするヴィブラート
ヴァイオリンにおけるヴィブラートは音程を上下に変化させます。このヴィブラートの幅や速度には、奏者の個性が大きく表れます。速度の速いヴィブラートの名演奏家と言えばハイフェッツでしょう。逆にゆっくりなヴィブラートで印象的なのはクレーメル、ジョシュア・ベルなどでしょうか。
私が心地よいと感じ、こんな風にヴィブラートをかけれるようになれたら...と憧れを抱くのは、オイストラフという演奏家です。オイストラフはスケールの大きくて暖かみのある演奏をしますが、幅の広いヴィブラートがとても魅力的です。
間違っていたヴィブラートの通説
「人はヴィブラートの高い音を音程と感じるため、ヴィブラートをかける時は元の音に対して上下均等にかけずに低い音に向けてかけるようにする。」このように認識している人をたまに見かけるのですが、次に紹介するtartiniというソフトで波形をみる限り、どうやらそれは誤りで実際には上下均等にかかったところを音程と認識するようです。私もヴァイオリンを始めた頃は下にかけるように教わっていたので、これを知った時は驚きました。
tartini
tartiniはGPLライセンスのオープンソースソフトウェアで、ヴィブラートの形状を視覚化する機能を持ちます。こちらを使ってオイストラフのヴィブラートを可視化してみましょう。
音源はブラームスのヴァイオリンソナタ第3番の2楽章を使いました。上記はその冒頭のキャプチャーです。テンポはアダージョのためゆっくりで、曲想からしてもヴィブラートを豊かにかけるのが一般的な箇所です。こうして波形を見てみると半音の1/3程度振幅があり、周期も安定しているように見えます。
自分のヴィブラートの波形を見てみる
続いて自分のヴィブラートの波形を見てみます。ヴィブラートをかけにくい1stポジションで人差し指、中指、薬指、小指、それぞれでヴィブラートをかけて録音し、tartiniで可視化してみました。因みに個人差はありますが、ヴィブラートが最もかかりやすい指は中指と薬指で、次に人差し指、そして一番かかり難いのが小指です。
人差し指
中指
薬指
小指
評価
振幅の幅が狭いのと、きれいな正弦波を描けていないのが見て取れます。耳で聴いてもヴィブラートの安定感に欠ける印象ですが、それが波形にも現れている感じがします。
楽器を壁につけてヴィブラートをかけてみる
ヴィブラートの練習方法の1つに楽器の先端(スクロールといいます)を壁につけて固定し、ヴィブラートをかけるという方法があります。この練習をする時は楽器を傷めないようにハンカチなどを楽器を壁の間に挟んでやります。先ほどと同様にヴィブラートをかけて録音しtartiniで可視化してみます。
人差し指
中指
薬指
小指
評価
固定していない場合と違いが分かり難いですが、よくよく見ると振幅の幅が広がっているのと、波の形が安定して音程のブレが少なくなってします。録音を聴くと結構違います。
なお、楽器を壁につけると固定化されるためヴィブラートはかかりやすくなりますが、反面、楽器の振動を止める事になるため響きが失われます。私がヴィブラートをかけ始めた頃はかけやすくするために顎で楽器を強く挟んで固定してしまっていました。これでは楽器の振動が抑制されてしまい、音色が著しく損なれます。そのため今では楽器を強く挟むのは避けるようにしています。楽器の固定化は、あくまでヴィブラートの練習用として行うと考えた方が良いと思っています。
楽器を壁につけたときの感覚でヴィブラートをかけてみる
次に楽器を壁につけたときの感覚を忘れないうちに壁から離して弾いてみます。
人差し指
中指
薬指
小指
評価
最初の波形と比べると特に小指の振幅の幅が広がっています。また、音程の上下のブレが少なくなったように見えます。総じて少し改善しているようです。
まとめ
音楽は耳で聴こえるものが全てではありますが、練習に視覚化するツールを補助として活用するのは効果的だと感じました。まず耳で聴いてそこで得た感触、例えばヴィブラートの幅が以前より広くなったように感じたとして、次に波形を見てそれが確認できると練習の方向性が正しいと実感できます。音楽は感覚に依る所が多く、練習していると簡単に迷い込んでしまうので、こうしたツールを補助的に活用するのは悪くないと思います。
ただ、オイストラフの幅広いヴィブラートには遠く及ばないことが今回明らかになったので、徐々に幅を広げていけるように頑張っていきたいと思いました。上達への道のりは長く険しい!
さて、明日は @earth429 が「Spotify APIとSlackbotの話」の記事を書いてくれるとのことです。Spotifyはクラシック音楽の楽曲も豊富に取り揃えていることもあって愛用しています。どんなエントリーになるのか楽しみです。